柔道が日本の物ではなくなったと言われて久しい。

オリンピックや世界選手権で日本が敗れるのは、日本柔道界が低迷しているからなのか、 それとも、スポーツとしてのJUDOには日本人選手の優位性がないからなのか、様々な論があるが、 お家芸と言われる故に他のスポーツとは異なった位置付けをされているのが柔道である。

そもそもお家芸とは何の事か。

スケートはロシアのお家芸か?卓球は中国のお家芸か?ボクシングはタイのお家芸か? そして、相撲や剣道は日本のお家芸と言うのか?中国のカンフーを中国人はお家芸とかスポーツとか呼んでいるのだろうか?

近所に道場があったり、学校教育の中で柔道が取り入れられているという点で、柔道が他国より日本で親しまれていることは確かだが、 お家芸なので日本人は優位であり、国際試合で勝って当たり前という気分を持つのは妥当なのだろうか。
柔道選手として才能を伸ばす環境は各国とも充分に整い、体格的な素養も日本人が抜きん出ているようには思えない。

また日本人の柔道も、かつての柔道では無くなっている。

連続する技の流れの中で勝負の駆け引きを競うことが少なくなり、1つ1つの技を細切れに判定する傾向は、 武道としての柔道を育てない。
日本でも育成しているのはJUDOなのである。

 

何故、柔道は世界のスポーツで剣道や弓道はそうではないのか。
また、柔道もいつから国際スポーツになり、各国の選手が強力になって行ったのか。

現在、IOC委員という、アマチュアスポーツ界の頂点に君臨するアントン・ヘーシンクは、その鍵を握っていると言って良いだろう。
幾多の競技の中で、選手から長じてIOC委員を務める人物を出しているものは稀である。
日本の一武道であった柔道が、IOC委員という権力者を生み出すことになった事も、近代柔道の歴史の一部分だろう。

現在の道上伯氏
 
また、IOC委員云々よりも、東京オリンピックでヘーシンクが金メダルを獲得したことそのものが、 柔道にとってエポックメーキング的な出来事となっている。
 
●エポックメーキングな出来事
そもそも東京オリンピックで、初お目見えとなった「柔道」は、1度きりの参加予定であった。
しかし、アントン・ヘーシンクの金メダル獲得(西洋人の無差別級優勝)により「柔道」がオリンピックで正式種目となったのである。
 
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