筆者が最近著した『どかんかい』(BABジャパ ン)の横綱前田山英五朗が少年時代高砂親方と出会 った地である。 そして、前田山がジェシー高見山をデビューさせ 国技大相撲を揺るがしたのと時を同じくして、国技 柔道を激震させたオランダのアントン・ヘーシンク を育てた道上が生まれたのもこの八幡浜だった。 少年時代、道上が小学校から帰宅する時、近所の 神社の前を通った。すると、神社内の畳の上で十四、 五歳の男子たちが互いに白い服を着て掴み合ったり 投げ合ったりしていた。 道上は彼らのやっていたものが柔道だとは知らな かったが非常に興味をもった。ある日、彼らがまだ 来ていない時に、彼らのやっていたことを思い出し ながら道上は一人で受け身を稽古してみた。 「本格的にやってみたい」と思ったが、道上はまだ 幼く中学生たちにも相手にされなかった。 その後、道上はこの地方で盛んだった相撲の稽古 を始めるようになった。道上は次第に頭角を現わし、 西宇和郡下の小学生の相撲大会で優勝するまでにな った。 そんな時、道上は一冊の本と出合い衝撃を受ける。 前田光世の「世界喧嘩旅行記」である。前田光世は グレイシー柔術のルーツとなった柔道家で、世界を 渡り歩きいろいろな格闘技の強豪たちと対決する話 に道上は血沸き肉踊った。 「俺も前田のようになりたい」 これが道上が柔道を始める直接の動機になった。
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